* 野洲の魅力を凝縮した決勝ゴール
全国高校サッカー決勝、初優勝を飾った野洲のゴールは、まさに野洲の魅力を凝縮したゴールと言える。
延長後半7分のゴールの起点となったのが左のストッパー田中の低い弾道のライナー性のピンポイントのサイドチェンジのロングパス。これが見事に右サイドの乾に渡る。そして、乾は右サイドからゴールへ向かって中へ切れ込んで行く。このドリブルで相手DF陣を中央に引き付けておいてサイドのスペースを空ける。そこへ上がって来たMF平原に、ヒールパスでつなぐ。そしてさらに外のサイドを上がって来た中川へ繋ぐ。中川は、完全にフリーでダイレクトでゴール前へ折り返す。そのボールに逆サイドからフリーで詰めていた滝川がゴールへ押し込んだ。
まさに、ロングパスによるサイドチェンジ、ドリブル、ヒールパス、2列目からの飛び出し、さらに3列目からの飛び出し、ダイレクトの折り返し、というバラエティーに富んだ攻撃だ。単に、野洲がショートパスを繋ぐチームではないことをこの決勝点がよく物語っている。
* 相手の裏を取るプレーの連続が、生んだ決勝ゴール
このゴールにもう一つの野洲のサッカーの特徴が出ている。それは、あらゆるレベルのプレーにおいて、「常に相手の逆を取る」ということ。田中の逆サイドへの大きなサイドチェンジ、そして乾の中へ切れ込むドリブル。こういう下準備があってこそ、フリーで良い態勢で、サイドからの折り返しが出来るというものだ。
* テクニックが、体力の消耗を防ぐ
また、この決勝ゴールで見逃せないのが、90分ハーフを戦った後の延長後半のプレーにも関わらず、ゴール前にはゴールを決めた滝川の他にもう一人フリーでゴール前に詰めていたこと。フィジカルで劣ると言われた野洲だが、この時間帯でも勝負時という場面では、これだけの人数が前線に飛び出す余力を残していたということは特筆すべきだ。テクニックとインテリジェンスが、体力の消耗を十分に補えることを証明したと言えよう。
* 山本監督の鹿実の裏を取る見事な作戦
相手の裏を取るのは、選手たちのプレーだけではない。山本監督の采配も、まさに相手の裏を取っていた。試合開始早々の20分くらまでは、鹿実が野洲のショートパスの繋ぎをつぶしに激しいプレスで来ると読んだ山本監督は、敢えてロングボールを使って、FWの青木にどんどん裏を取らせた。これで鹿実のプレスは、完全に空回りしてしまった。そして、試合が落ち着いた20分以降になると持ち前のショートパスの繋ぎを見せ始めて、じっくり攻め始めたのはなかなか見事。野洲の先制点も、まさにこの20分を凌いだあとの23分に奪っている。
「他のチームは全部、鹿実の最初の20分の猛攻でやられていた」(野洲・中川)
* スタンディングで、ボールが奪える守備陣
野洲というと奔放な攻撃サッカーというイメージが強いが、守備もなかなか上手い。まずは、パスカットを狙う。パスカットが狙えなければ、相手に体を寄せて、スタンディングでボールを奪う。ボールを奪う技に長けているので、ほとんどスライディングタックルがない。パスミス、ドリブルなどの失敗があっても、すぐにボールを取り返せる。野洲のポゼッションサッカーを支えているのは、このボール奪取術と言えるかもしれない。
* テクニックも徹底的に鍛えれば、フィジカルサッカーに対抗できる
今大会の野洲のサッカーは、テクニック偏重でも、テクニックを徹底的に鍛え上げれば、この年代においては、フィジカル、スピードのサッカーに十分対抗できることを証明してくれた。短期間で結果を求めてしまう指導者は、どうしても即効性のあるフィジカル強化と前線放り込みサッカーに走ってしまいがちだ。また、テクニックを重視しようとしても、なかなか結果がでなかったりして、途中でフィジカル強化の誘惑に捕われてしまう。最近の静学などが、まさに悪いスパイラルに陥ってしまった例だろう。
野洲のようなスタイルは、どこの指導者も簡単に出来ることではないかもしれない。しかし、今回の大会で優勝という結果を示してくれたことは、テクニック重視したくても、そこまで踏み込めなかった指導者たちには、大きな希望となるだろう。この流れを確実なものにするためにも、野洲には、来年さらにレベルアップしたサッカーで連覇を果たして欲しい。
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