選手の価値をあげるには、日本サッカーの実力アップしかない
鹿島の中田浩二の移籍問題は、20万ユーロというマルセイユの提示した金額や今月末で契約が切れれば無償移籍も可能、ということで今後の動向が注目され論議も活発だ。
移籍金の安さに関しては、経営戦略が稀薄で交渉下手なJリーグクラブを見下しているというころもあるだろう。
しかし、日本国内では、たとえスター選手でも、彼らから見れば、どうしても「実績の少ない新人選手」という認識になってしまうことも忘れてはならない。彼らにとっても、ギャンブルなのだ。それが、双方の金額での評価のギャップ感を生んでしまうのは致し方ない。
これを是正するには、Jリーグ、日本サッカーのレベルアップを図るしか道はない。Jリーグチャンピオンが、アジアのチャンピオンにもなれないようでは、とても話にならない。
クラブ側の視点での、海外流出による損失を防ぐ方法
ここで視点をちょっと変えて、クラブ側としてこうした被害を事前に防ぐ方法を経営的視点で考えてみたい。
前提としては、どうしたら一番クラブの損益上メリットがあるか、の一点に絞る。「サポーターに反感を買って、クラブ人気が落ちる」ことによる経営への影響などの要素は、ここに入れない。
複数年契約でプロテクト
Jリーグのローカルルール(Jリーグの移籍係数。契約終了後30ヶ月まで移籍金を請求可能)が通用しない海外チームへの移籍の場合、今回のような契約の隙間を狙ったアタックをどうしても受ける可能性がある。契約の隙間を作らないという点では複数年契約を結んで選手を縛るという方法がある。
成長期の選手や海外志向の選手は、どうしても単年契約を希望するケースが多い。しかし、海外から狙われそうで、かつ本当にキープしておきたい選手であれば、クラブとして最大限の条件を提示して複数年契約の締結を目指すべきだ。特に、「Mr. 〜〜」といったクラブの顔であれば、経営的視点からもメリットがある。
それでも、駄目な選手であれば、クラブ残留に固執はやめて、できるだけ早い段階で「高く売る戦略」を取るべきだろう。どうしても手塩にかけた生え抜き選手などは、意地でも手放したくないだろう。
しかし、その選手に固執していると、その選手を失うだけでなく、せっかくの「資金獲得機会」も失うことになりかねない。
海外クラブと正面対決は避けるのが得策?
資金の豊富なクラブであれば、一人二人選手がただ同然で持っていかれても、それに代わる選手を補強すれば済むことかもしれない。しかし、貧乏なクラブではそうはいかない。
もちろん、欧州の生き馬の目を抜くような海千山千のサッカービジネスの亡者たちに、果敢にに交渉を挑むという手もあるかもしれない。
しかし、海外との交渉においては、「日本的な以心伝心、口約束、浪花節的思考」は、まったく通用しない。いかにして、自分の権利を最大限に守り、相手からアドバンテージを勝ち取るか。それに尽きる。そして、勝ち取った権利は、契約に具体的に盛り込んではじめてその意味を持つ。
交渉の仕方も、アングロサクソン系ゲルマン系とラテン系では、まったく違う。交渉術のプロでなければ、とても太刀打ちできない世界である。
しかし、現在そんなタフでプロフェッショナルな交渉出来る国際感覚のあるスタッフを持つJリーグクラブはあるだろうか?
では、どうすれば良いか。究極の選択は、こうしたタフな交渉が発生する機会を徹底的に排除すること。海外と交渉しないで済むアプローチを取るのである。
究極の選択、海外に目を付けられる前に高く売ってしまう
海外と交渉しないで済むアプローチとは、将来的に海外クラブに目を付けられそうで、海外志向の選手を、海外に目を付けられる前に、「国内のクラブに高く売ってしまう」ことである。
海外から目を付けられる半年くらい前に、売るのがベストかもしれない。「日本のローカルルール」を逆手に取るのである。
こうして得た資金の使い方は、クラブの台所次第だろう。
資金の運用例
*選手の移籍によってチーム力が著しく落ちると予測される場合・・・即戦力の外国人補強
*戦力に余裕がある場合・・・次世代の主力となれるような国内でブレーク寸前の若手獲得
*「育てて売る経営」を目指す場合・・・選手育成に定評のある監督や下部組織指導者に優秀な人材を獲得
実例1 せっかくの資金を無駄使い、昨シーズンのエスパルス
昨年、エスパルスは、海外移籍を断念した三都主をレッズに売って噂では約3億8千万と言われる大金を手にした。もし、三都主が海外移籍していたら、おそらく二束三文で移籍させることになっていただろう。
おそらく、狙ったのではなく偶然だろうが、そこまでは良かった。しかし、その後が悪かった。せっかくの資金で獲得した選手、監督が、すべてはずれ。結局、一年でせっかくの資金のおそらく大半をドブに捨ててしまった。慣れない大金を手にしたのが良くなかった。
今年は「学習効果」が発揮されてか? 海外移籍の目がなくなった戸田を、商品価値のあるうちに、しっかりヴェルディに売ったのは評価できる。
実例2 やっぱりしたたか? 市原フロント
こういう視点で見ると、結果論ではあるが、市原のフロントはなかなかしたたかに見える。茶野や村井が、海外から触手を伸ばされる選手に成長するかどうかは、わからない。しかし、国内で高く評価されている旬のうちに、磐田に移籍させて移籍金を得ることが出来た。
愛する選手が次々に流出することは、ジェフサポーターにとっては、耐えられないことかもしれない。しかし、問題は、こうした移籍で得た資金どう活かすかだ。
市原は、予想通り、オシムもしっかり続投させている。ジェフはユースにも、しっかり「オシム・イズム」が注入されているという。いくら主力選手を引き抜かれても、後から後から、新しい才能が育ってくるシステムを目指しているとしたら、すごい。
海外レンタル移籍は、出来る限り避けるべき
一番良くないのは、海外へのレンタル移籍を続けて、結局チームで出場機会を失い、ずるずると選手の商品価値が落ちること。選手にとっても、クラブにとっても、得るものは少ないのは言うまでもない。
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